まさか彼女に抑え込まれて降参するなんて…

まさか彼女に抑え込まれて降参するなんて…

まさか彼女に抑え込まれて降参するなんて…


彼女とは大学時代のサークル仲間。
付き合いが始まったのは卒業してからで、2人とも社会人2年目。
お互いに趣味が合うわけじゃないけど、なぜか一緒にいて落ち着く。そんな関係だった。


「最近さ、キックボクシング始めたんだよね」


そう彼女が言ったのは、たしか3ヶ月ほど前のこと。
可愛らしくて小柄、どこか守ってあげたくなるタイプだったから、意外だった。


俺はというと、筋トレ好きの見た目だけマッチョ。実際、格闘経験なんて皆無だったし、彼女の話も「へぇ〜すごいじゃん」と聞き流していた。


――あの日、何がきっかけだったかは正直覚えていない。


飲みの帰りにどちらからともなく「じゃあさ、試しに組んでみる?」という流れになって、俺の家で軽く“遊びスパー”をすることになった。
冗談半分。俺は、正直なめてた。
彼女はTシャツとショートパンツに着替え、髪をまとめた。見慣れたはずの姿が、なぜかその日は違って見えた。


「本気でいくよ?」


そう言ってニッと笑った彼女の目が、妙に鋭く感じられた。
構える暇もなく、俺はあっという間にバランスを崩された。
軽く足を払われて、床に背中を打つ。ふざけてるようで動きが正確で、迷いがない。


「ちょっ、まっ――」と声を出した瞬間、馬乗りになられていた。

腰に彼女の太ももが巻きつき、両手首が押さえつけられる。力を入れても抜けない。信じられないくらい、びくともしない。


「ほんとに動けないの? まだ本気出してないのに」


彼女の笑顔は柔らかいけれど、その体勢は完全に“勝者”のものだった。
俺は何度か体をねじろうとしたけど、彼女の体重移動がうまくて返せない。
逃げようとすればするほど、下半身が密着して、身動きが取れなくなる。


「降参、しちゃえば?」


冗談で始めた遊びのはずが、心の奥底に“男としてのプライド”が芽生え、余計に冷静さを失っていく。
呼吸が荒くなる。顔も赤い。でも、それは苦しさだけじゃなかった。
押さえ込まれている状況、彼女の汗の匂い、見下ろしてくる優越感のある表情。
なぜか、そのすべてが体の奥に火をつけた。


「くっ……ちょ、無理……」


ようやく絞り出したその声を、彼女は満足そうに聞いた。


「うん、勝ちね」


彼女はそう言って、ふっと体を引いた。
全身が汗ばんでいた。敗北感と羞恥心で、なぜか目を合わせられなかった。
でも、なぜか嫌な気持ちはしなかった。むしろ、心のどこかで「またやりたい」とすら思っていた。



俺は完全に、負けた。


それも、ただの格闘じゃない。
プライドも、力も、立場も、すべて――彼女の下で、崩されたのだ。


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