

自分が今の性癖に至るきっかけは、はっきりしている。
格闘技経験がある、というと大げさに聞こえるかもしれないが、
学生時代、道場に通い、練習として普通にスパーをしていた。
当時は「強くなること」「技を覚えること」しか考えていなかったし、
女性と組む場面があっても、正直なところ余裕で対処できると思っていた。
――あの日までは。
相手は女性だった。
体格的にも、筋力的にも、自分の方が上だと疑っていなかった。
だから、油断があったのだと思う。
スパーの流れの中で、ふとした拍子にバランスを崩し、
気づいた時には首を取られていた。
「大丈夫?」
そう声をかけられたのを、今でも覚えている。
次の瞬間、首の横にじわっと圧がかかり、
一気に空気の流れが変わった。
――あ、これ、抜けられない。
そう理解した時にはもう遅かった。
力で外そうとしたが、女性の脚と腕の使い方が正確で、
無駄な力を一切使っていないのが分かった。
視界が、ゆっくり暗くなっていく。
音が遠のき、頭の中がぼやける。
苦しい、という感覚よりも先に来たのは、
説明のつかない「しびれ」だった。
身体中の細胞が、内側からざわつくような感覚。
モヤモヤして、熱くて、でもどこか心地いい。
――あ、今、この人に“持っていかれてる”。
そう思った次の瞬間、意識が途切れた。
目を覚ました時、床に寝かされていて、
周りの人が覗き込んでいた。
女性はもう離れていて、何事もなかったような顔をしていた。
でも、自分の中では、完全に何かが変わっていた。
試合なら勝てた。
実際、体力も技術も自分の方が上だったと思う。
それなのに、
「捕まった瞬間に、すべてを委ねさせられた」という事実だけが、
頭から離れなかった。
非力なはずの相手に捕まり、
力の強弱を相手の判断ひとつで調整され、
意識を落とされるかどうかさえ、相手次第。
命を操られる、という言葉が、
その時ほど現実味を持ったことはない。
それ以来、
自分を絞め落とした“脚”が、頭から離れなくなった。
脚で絞められるということ。
人体の中でも特に筋肉量の多い部位で、
腕とは比べものにならない力を生み出す。
女性であっても、
正しく使えば、脱出不能な絞めを作れる。
腕による絞めも同じだ。
細い腕でも、首に食い込ませれば簡単に落とせてしまう。
特にスリーパーは、顔の距離が近い。
相手の表情を見ながら、意識が落ちていくのを感じられる。
柔らかい肉体だけで、
相手の意識を奪う。
武器も、暴力も使わず、
ただ「身体」と「意思」だけで支配される感覚。
肉体的には確実にダメージがあるはずなのに、
なぜかやめられない。
あの一度の経験が、
すべての始まりだった。
この感覚を理解してくれる人がいるのか知りたくて、
サイトを作り、発信を始めた。
すると、思っていた以上に反響があった。
絞められたい人。
絞めてみたいと感じていた女性。
誰にも言えずにいた感覚を、
同じように抱えている人が、確かに存在していた。
だからこそ、
この体験と、このプレイの魅力を、
これからも言葉にしていきたいと思っている。