第4話:華ノ峰、精鋭の次の一手

第4話:華ノ峰、精鋭の次の一手

登場人物
■ 桐生 翔太(きりゅう しょうた)
25歳。身長165cm・体重61kg。元・高校レスリング部エース。


鍛えられた筋肉に、瞬発力、スタミナもある自称“エリート”。


剛塾の中では異色の存在で、女子との対戦にも自信満々。


「女に負けるようじゃ、男じゃねぇ」が口癖。


■ 九条 冴子(くじょう さえこ)
24歳。身長171cm・体重76kg。華ノ峰の“精鋭”。元・柔道有段者で、現在は相撲特化型に転向。


表情は冷たく、必要以上に言葉を発しない“無表情の女力士”。


対戦相手を「潰す」ことに何の感情も抱かない。


本編:第4話「華ノ峰、精鋭の次の一手」
試合前日。剛塾の控室では、久々に声が響いていた。


「ははっ、任せとけって。今まで出てった奴ら、根性足んねぇんだよ」


桐生翔太は、ストレッチをしながら笑っていた。


その声に、誰も返さなかった。


彼は、塾内で唯一“女子相手に勝てる”と本気で信じている男だった。


だが、それは――あまりにも無防備な自信だった。


土俵上
「第4試合――剛塾、桐生翔太! 華ノ峰、九条冴子!」


場内が静まる。


剛塾メンバーが息を呑む中、桐生だけが堂々と土俵を歩いた。


「よろしくお願いしまーす」


軽く手を上げ、冴子に声をかける。


だが、返ってきたのは無言。


冴子は微動だにせず、じっと桐生を見据えていた。


その瞳は、まるで「もう勝敗は決まっている」と告げているようだった。


「はっけよい、のこった!」


桐生は低く構えた。


(まずは押し込む。先にペースを握れば――)


だが、その一歩が、すでに冴子の術中だった。


次の瞬間。


冴子の踏み込みが、まるで“音速”だった。

「っ……!?」


重心を崩され、腕を取られる。


そして、桐生の体が宙を舞った。


「う、あ……!」


ズシャアッッ――!!


土俵に激しく叩きつけられた。


全身から空気が抜けるような衝撃。


冴子は、片膝を土俵についた桐生の背に押し当て、無表情のまま動かない。


観客席に、どよめきが広がった。


「勝負あり! 白方・九条冴子!」


無情な声が響く。


桐生は、土俵の上で息を整えられない。


心も体も、打ちのめされていた。


控室に戻って
桐生はふらつきながら戻ってきた。


さっきまでの威勢は消え失せ、目に光がない。


「……マジで……やばいな、あの女……」


そうつぶやいた声は、震えていた。


何かが壊れた。


それは、筋力でも技術でもなく、彼の“信じていた世界”だった。


男が女に負けるなんてあり得ない。


そう思っていたものが、真正面から、あっさり打ち砕かれた。


塾内に重たい空気が戻る。


誰も、桐生を責めない。


だが――誰も、“勝つ姿”を想像できていない。


もはやこの空間にあるのは、敗北と、無力感だけだった。