忘れられない屈辱の土曜日

忘れられない屈辱の土曜日

忘れられない屈辱の土曜日 〜俺は彼女の足の下で敗北した〜


あれは忘れもしない、蒸し暑い土曜の午後だった。


普段はおとなしいタイプの俺が、ちょっとしたノリで「軽く組手でもしてみる?」なんて言い出したのがすべての始まりだった。
彼女は、俺と同い年の女性。細身だけど芯が強く、どこか自信に満ちている雰囲気のある人だった。
普段からヨガだのキックボクシングだの、何かと体を動かすのが趣味らしい。俺はジム通いの“なんちゃって筋トレ男子”。見た目はそこそこ自信があった。


「じゃあ、受けて立つよ?本気出していい?」


そう言って彼女は、Tシャツを脱ぎ、タンクトップ姿になった。
見惚れたのも束の間、床に敷かれたマットの上で、俺はすぐに“現実”を知ることになる。
最初は軽いふざけ合いのような感じだった。
けれど、彼女の動きは滑らかで速く、何よりも無駄がなかった。
俺が腕を伸ばした瞬間、その手首をとられ、次の瞬間には背中を床に叩きつけられていた。


「え、マジで…?」


動揺している間に、彼女は俺の腰に跨がり、上体を起こしたまま体重を預けてきた。
そのまま馬乗りで両手首を床に押さえつけられる。必死に抜こうとするが、びくともしない。


「どうしたの?男の子でしょ?」

その挑発的な一言が、妙に心に刺さった。
俺の顔を見下ろしながら、余裕の笑みを浮かべる彼女。汗ばんだ太ももが俺の胴を締めつけ、逃げ場を完全に奪っていた。
一瞬、力任せにブリッジで返そうとしたが、あっさりバランスを取られて失敗。
返そうとするたびに、彼女の腰が落ちてきて、鼻先すれすれまで顔を近づけられる。


「こういうの、得意なんだよね。抑え込み」


そんな言葉とともに、俺は本気で息が上がってきた。汗、鼓動、羞恥心。
腕を引き抜こうとするたびに、笑われる。
顔をそむけようとしても、両脚が絡まり、押さえつけられている。
しまいには、彼女が自分の足の裏を俺の胸にぐっと押し当て、軽く踏みつけるようにして「ほら、降参したら?」と囁いてきた。
そのとき、俺は気づいた。
本気で負けたんだ、と。
何の技術もない俺が、ただの見栄とプライドで挑んだ結果、完全にねじ伏せられた。
マットの上、足の下で顔を赤らめながら敗北を認めた俺に、彼女は一言、


「またやる?今度はもっとちゃんと技かけてあげるよ」と笑った。


その日から、俺は妙な敗北感と高揚感を引きずったまま、もう二度と軽口は叩かなくなった。
けれど今でも、ふと思い出すときがある。
あのとき、あの体勢、あの足の感触。
屈辱のはずなのに、なぜか、胸の奥に妙な熱が残っている。



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