

第1章から第5章までで確認してきたのは、女性主導構図が社会構造の変化を背景に、視覚形式として定着し、さらに市場の枠組みに組み込まれた過程である。
構図が単なる例外的現象ではなく、繰り返し求められる形式となったとき、持続的供給主体が必要になる。女性主導という関係は、偶発的な出来事ではなく、一定の需要を持つ市場へと変化した。
この段階で、専門的に制作・流通を担う主体が現れる。
日本に輸入された最古期の海外メーカーとして知られるのが Joan Wise である。
撮影は主として住宅空間で行われていたとされる。大規模なスタジオではなく、家庭的環境の中で対峙構図が記録された点が特徴である。
この形態は、地下セッション文化の延長線上にあると考えられる。女性が主導する構図は、制度化された興行というよりも、私的空間での関係性として提示された。
Joan Wise の具体的な設立年や初期流通経路については、ここでは確定的資料を提示できないが1980年代であったかと推定しておきます。日本へのVHS輸入は、1990年代初め頃に書店や海外ビデオ専門販売店カバリエなどで散見された。
しかし、日本市場において初期に流通していたという事実は、女性主導構図が国境を越えて需要を持っていたことを示す。
次に位置づけられるのが Steel Kittens である。
ベリンダ・ベルが女子プロレスラーとしての活動後に関与したメーカーとされる。
Joan Wise が私的空間的性格を持っていたのに対し、Steel Kittens はリング設備を備えた空間での撮影が多く、構図はより興行的・形式的であった。
ここで女性主導構図は、より明確な演出と安定した制作体制のもとに提示される。スタジオ化は、構図を偶発的出来事から継続的商品へと転換させる契機となる。
Steel Kittens の設立年については、1980年代後半から活動が可視化されると考えられるが、正確な創業年はここでは断定できない。
2024年12月廃業する。

図1 Steel Kittens 商業ビジュアル(1990年代)
1990年代初頭、Steel Kittens は元女子プロレスラーであるベリンダ・ベルの関与のもと、リング設備を備えた環境で女性主導構図を安定的に制作した。明確なロゴ、スタジオ撮影、パッケージ化されたビジュアルは、女性優位構図が偶発的実践ではなく、計画的に供給される商品形式へと移行したことを示している。
DWW(Danube Women Wrestling)はオーストリア拠点とされるメーカーである。
芝生や屋外、マット環境での撮影が多く、女性同士のみならず、女性が敗れる場面も含むリアル志向が特徴とされる。
この点で、DWW は演出優位型とは異なる方向性を示す。女性主導構図を前提としつつも、勝敗の現実性を保持する制作方針が見られる。
DWW の設立時期については1990年代と考えられるが、具体的な創業年はここでは確定できない。
2018年に廃業。
三者に共通するのは、女性主導構図を継続的に制作し、流通させた点である。
しかし、その形式は一様ではない。
Joan Wise は私的空間型
Steel Kittens はスタジオ興行型
DWW はリアル志向型
この差異は、女性主導構図が単一の形式ではなく、複数のバリエーションを持つ市場へと成熟したことを示している。
専門メーカーの出現は、女性主導フェチが偶然的現象ではなく、持続的需要を持つ市場構造に組み込まれたことを意味する。
20世紀における構造変化が女性の身体を力の単位として承認し、視覚文化が優位構図を形式化し、市場がそれを商品化した。
その帰結として、専門メーカーが成立する。
女性主導フェチの歴史は、単なる嗜好の変遷ではない。それは、力関係の再編と、その再編が商品形式へと転化する過程の歴史である。
そして現代においては、世界中にフェチメーカーが広がっていく
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